富山県境を越えて走る路線バス 3(岐阜県境編)

前回の記事の続き。今回は富山-岐阜県境を越える路線バスについて触れていく。両県間の県境を越える路線バスのルートは2か所ある。

濃飛バス 神岡猪谷線

  • 運行主体:濃飛バス
  • 路線名:神岡猪谷線
  • 県境越え区間:猪谷駅[富山]~中山[岐阜]~[富山]~横山[岐阜]
  • 運行日:毎日

富山-岐阜県境 国道41号 新国境橋

猪谷駅バス停と猪谷駅
濃飛バス 猪谷駅バス停

1つ目のルートは国道41号を走るバスで、濃飛バスの路線が該当する。富山県側の猪谷駅が始発バス停でもあり、次のバス停の中山ですぐ岐阜県入りする。ただ岐阜県へと入ったものの、次の横山バス停までの区間で再度富山県に入ったりもする。たいていの都府県境は河川や尾根上に設定されることが多く、国道41号が川を渡ったので再度富山県に入り、横山トンネル内で尾根の下をくぐったために岐阜県へと回帰している。このため3つのバス停間で3回県境を越える路線ということになるが、次に出てくる路線はもっとハイクラスなやつなので、ここではこれくらいにしておく。

濃飛バス 横山バス停
濃飛バス 横山バス停

猪谷から濃飛バスに乗ると、路線名の通り神岡まで行くことができ、このブログでも「標高差2,721m 79」で利用したことがある*1。また、猪谷駅から先の乗り継ぎは鉄道だけでなくバスも利用可能で、富山駅から伸びている富山地鉄バスに乗り継ぐのも一興だ*2。ただし、地鉄バスは駅前に乗り入れず、国道41号上に猪谷バス停があるので注意が必要だ。

濃飛バス 中山バス停
濃飛バス 中山バス停

中山バス停の手前に横断歩道がある
中山バス停と国道41号

Googleストリートビュー上の中山バス停(2023年11月)

1つ気になったのは、中山バス停の位置について。2023年11月のGoogleストリートビューでは谷中山公民館*3の隅にあったが、2024年9月の段階では消防庫の先、距離にしてだいたい30mほど移動している。これくらいの中途半端な移動というのはあまり見かけない気もするが、もしあったとしても最寄りのバス停ではないかぎり気づかない変更だろう。移動の理由は、おそらくだが横断歩道の新設によるものと考えられる。2023年11月のGoogleストリートビューにはない横断歩道が、今回撮影した写真では確認できる。バス停に停まった路線バスが横断歩道の邪魔にならないようバス停が動いたのだろう*4

加越能バス 世界遺産バス/なんバス 成出城端線

  • 運行主体:加越能バス
  • 路線名:世界遺産バス
  • 県境越え区間:楮口[富山]~[岐阜]~楮[富山]~小白川[岐阜]~成出発電所前[岐阜]~成出[富山]~[岐阜]~[富山]~芦倉[岐阜]
  • 運行日:毎日
  • 運行主体:南砺市
  • 路線名:なんバス 成出城端線
  • 県境越え区間:西赤尾[富山]~[岐阜]~楮[富山]~[岐阜]~成出[富山]
  • 運行日:平日(祝日および12/29~1/3は運休、成出行の下梨以降はデマンド運行)

富山-岐阜県境 国道156号 合掌大橋

2つ目は国道156号を走るバスで、こちらは加越能バス南砺市のなんバスが該当する。先述の濃飛バスは3回県境を越えていたが、こちらはそれ以上で加越能バスは7回も県境を越えて進む。これは庄川沿いに設定された県境を、道路改良された国道156号がトンネルや橋梁でまっすぐ貫いているためだ。県境越えの回数が多いことから、それを売りにした掲示が道路上にもなされている。何はともあれ、この国道156号を走るバスは必然的に県境越えを繰り返さざるを得ない。

道路標識に「この先 川を渡るごとに 県境がかわります」と書かれている
飛越峡合掌ライン

加越能バス(なんバス) 西赤尾バス停
加越能バス(なんバス) 西赤尾バス停

加越能バス高岡駅*5から白川郷(荻町)まで走るバスを運行している。現状は「世界遺産バス」と名乗り、専用塗装の車両が高速経由*6で運行されているが、かつては高岡から荻町神社前まで延々下道をノンステップバスが走っていた時期もあった*7ストリートビューを眺めていたら当時のバス停の写真が残っていたので、以下に載せておく。

加越能バス 荻町神社前バス停(2010年8月)

話がそれた。南砺市が運行するなんバスはJR城端駅~成出*8で運行されているが、コミュニティバスということもあって成出発のバスは朝のみ、成出行のバスは夜のみという極端なダイヤとなっていて、外部からの利用については相当難易度が高い、というか無理だろう*9

加越能バス 楮口バス停
加越能バス 楮口バス停

県境越えの区間は前述のとおり楮口*10から始まる。バス停付近で合流する境川沿いに延びてきた県境が庄川を南下するようになり、楮口以降しばらくは地形に左右されない国道156号のせいで富山県岐阜県の行ったり来たりが始まる。ただ、県境を越えるたびにバス停があるわけではない。楮口の次のバス停は楮口と同じ富山県バス停だが、庄川を2回越えるため岐阜県側に1度足を踏み入れることになる。にはなんバスのバス停もあり、集落の規模もそこそこある地区の中心付近に設置されていた。

加越能バス(なんバス) 楮バス停
加越能バス(なんバス) 楮バス停

続く小白川*11で初の岐阜県側のバス停となる。バス停のある集落はもちろん岐阜県だが、富山県に挟まれた集落ということもあってか義務教育は南砺市が担っているようで、バス停付近にあった看板には「上平小PTA」と書かれたいた。次の成出発電所岐阜県内だが、付近にあるのは小白川簡易郵便局くらいで、バス停名のもとになった成出発電所についても、庄川を越えた右岸、つまりは富山県にある施設である。

横断歩道を渡った先に「右左右 しっかりたしかめてわたろう!! 上平小PTA」と書かれている。「上平」は平成の大合併前にあった旧自治体名。
加越能バス 小白川バス停

加越能バス 成出発電所前バス停
加越能バス 成出発電所前バス停

2つの岐阜県側のバス停を過ぎると、再度富山県に入って成出バス停となる。富山県のバス停はこれが最後であり、ということでなんバスもここが起終点だ。なお、なんバスが加越能バスと同経路を通過するにもかかわらずいくつかのバス停を経由していないのは、①南砺市のバス故の通過(小白川などの岐阜県内のバス停)、②コミュニティバス故の通過(付近に住居がない楮口バス停など)だと思っている*12。公営のコミュニティバスよりも私企業の路線バスの方がバス停が多い区間というのは、けっこう珍しいのではないかと思う。

加越能バス(なんバス) 成出バス停
加越能バス(なんバス) 成出バス停

成出橋を渡る世界遺産バス
成出橋を渡る世界遺産バス

成出バス停を通過する世界遺産バス
成出バス停を通過する世界遺産バス

成出でなんバスは終了だが、加越能バスはさらに進む。次の芦倉岐阜県だが、成出芦倉間でもう一度富山県内に入るため、最終的に7回の県境横断が発生することになる。この芦倉バス停、写真からも分かるようにロックシェッドの中にあるため、閉塞感と自動車の走行音が半端ない。ここでバスを待つのは非常に勇気がいるように思う。

加越能バス 芦倉バス停
加越能バス 芦倉バス停

なお、前述のとおり加越能バス白川郷が終点だが、その先は御母衣ダム手前の牧までしかバスはなく、高山方面へは東海北陸道経由での運行となるため、バスの乗り継ぎは可能ではあるもののちょっと自分の興味からは外れる感がある。高山発牧行のバスが路線バスタイプで運行されているのなら乗ってみたいが、さすがに高速走行区間のある路線に一般タイプのバスは入らないだろう*13。ただ気になるところではあるので、世界遺産バスから高山方面への乗り継ぎは試してみたいところではある。


*1:また、かつて地鉄濃飛バスが共同運行していた神岡線も「中津川→富山6」で利用している。

*2:地鉄バス猪谷線の乗車記事は「年末年始ふり~きっぷ9」および「標高差2,721m 78」を参照。

*3:中山よりも猪谷側にある谷地区とバス停のある中山地区の2地区共同の施設と思われる。

*4:濃飛バスは前扉のみで出入りするので旧来の場所では車両自体が横断歩道にかかりそうでもあるし、停車したバスによって横断中の歩行者が対向車から見えにくくならないような対策という点も考えられる。

*5:一部、城端駅発着の便もある。

*6:加越能バスの「世界遺産バスの一部経路変更について(ご案内)」によると、主たる経路に「高岡砺波スマートIC北陸道東海北陸道~福光IC」と書かれており、富山県内の一部区間は高速道路を使用するようだ。

*7:このころに1度だけ利用したことがある。

*8:一部は平高校もしくは下梨どまり。

*9:ただ、(現時点では運休中だが)荻町7:00発の加越能バスに乗ると成出の通過予定時刻は7:20で、月・木のみ運行の成出7:30発のなんバスには乗れそうだ、が、荻町泊でもしないかぎり無理だろう。ちなみに、加越能バスとなんバスの成出出発には10分の差があるが、JR城端駅の到着予定時刻はどちらも8:15となっている。

*10:「楮」の読みは「こうぞ」。

*11:地名の読みは「こじらかわ」と濁るようだ。

*12:このおかげで、なんバスにとっての県境越え直前のバス停は西赤尾まで遡ることになる。

*13:乗車定員やシートベルトの問題があるため。