これまで富山-新潟県境・富山-長野県境・富山-岐阜県境と続いてきた県境越えシリーズ最後の記事は、富山-石川県境を越えるバスについて。休止中の路線も含めると県境越えルートは4路線あるので、北から順に紹介していきたい。
北鉄能登バス 脇線
脇バス停全景
まずは北鉄能登バスについて。脇という集落は富山県氷見市に属しており、ここに七尾駅前からのバスが通じている。県境越えの区間は終点の脇の1つ先のバス停である新脇と東大泊間で、前者は富山県で後者は石川県だ。路線が設定されている国道160号は海沿いを進むので、バスから見える景色はなかなか良い路線だ*1。運行本数は平日6往復・土休日5往復とそこそこあり、前述の脇バス停まで高岡側から加越能バスが来ているので、わくライナーの運行がない時期*2でも高岡~七尾をバスで抜けることができる。所要時間は(乗り継ぎが良ければ)津幡経由の鉄道と遜色なく、運賃も鉄道より400円ほど安い*3。自分が使うとしたら、高岡~和倉温泉間を往きは路線バス乗り継ぎ、帰りはわくライナーみたいな日帰りをやってみたい。
北鉄能登バス 新脇バス停
北鉄能登バス 東大泊バス停
新脇は脇からあまり離れておらず、道路が湾に沿うようにあるので脇バス停を確認することもできる。位置的に「北脇」や「東脇」でも良さそうな場所にあえて「新」にしたセンスを褒めたいが、バス停や周辺に「新」といった雰囲気は全くない。石川県側の東大泊は待合所の屋根に漁具が置かれていた。漁村をイメージするオブジェなのか置き場に困った誰かが置いたのかは不明だが、前者であってほしいところだ。
加越能バス 砺波~アウトレットパーク~金沢線
- 運行主体:加越能バス
- 路線名:砺波~アウトレットパーク~金沢線
- 県境越え区間:三井アウトレットパーク北陸小矢部[富山]~高柳[石川]
- 運行日:土・日・祝日
続いては砺波~金沢間を三井アウトレットパーク北陸小矢部*4経由で走る加越能バス。この路線は休日のみアウトレット経由で運行され、かつそのときは全ルートが下道経由となるので、本項で取り上げる対象となっている。いっぽう、平日についてはアウトレットを経由せずに金沢から砺波へ直行するため北陸道経由での運行となるので、高速道路を走行中の県境越えとなる。同じ路線が平日と休日で高速利用の有無が切り替わるなんて、割と珍しいのではないかと思う。
三井アウトレットパーク北陸小矢部バス停を出発する加越能バス
写真については「標高差2,721m」で利用した際に撮影したもの*5。石川県側の高柳についてはさすがに遠く、撮影には行っていないのでGoogle ストリートビューでお茶を濁させてもらう。
加越能バス 石動駅前~くりから不動寺線
3つ目はくりから不動寺線。加越能バスの運行状況を見ると「令和2年7月より当面の間運休」とあるので、現状は運行休止路線ということになる。ただ、くりから不動寺バス停に括りつけられていた時刻表には令和6年の正月に運行されたときのものがあったので、完全に廃止された路線というわけではなさそうだ。ちなみに加越能バスのサイト上の取り扱いは、時刻表では「(※毎月28日のみ運行)」として掲載しているが、路線図には描かれていないのが現状だ。なお、正月運行のダイヤと毎月28日運行のダイヤは異なっており*7、正月のバス時刻表には「無料シャトルバス」とあるので、往時とは異なった形態で運行されているようだ。
くりから不動寺バス停に掲示されていた令和6年正月の臨時時刻表
くりから不動寺バス停は倶利伽羅不動寺からちょっと離れた場所にある。バス停は石川県内に所在しているが、くりから不動寺からかつての国道8号が越えていた天田峠までの区間で石川~富山~石川と行き来し、峠より先は富山県となる。その後は五間橋などを経由して石動駅前へ向かうのだが、Googleストリートビューや現地調査ではバス停の姿を確認できなかった*8。運行休止中、また運行したとしても月1回くらいの頻度でしか経由しないバス停ということで、現在は配置していないのかもしれない。
なお、乗り継ぎについて、かつては北鉄金沢バスが金沢駅西口から倶利伽羅不動寺まで運行する臨時バスというのもあり、それで石動~金沢間をバスで繋ぐことができていた。が、当該サイトには「当面の間運休いたしております。(運行路線上の道路におけるがけ崩れのため)」とあり、またバスルートでもバス停や運行ルートが確認できないことから、くりから不動寺を介して小矢部と金沢を乗り継ぐことは現状できなくなっている。なおこの北鉄バスの路線についても県境越え路線バスである可能性はあるが、バスが走れる道路という観点から考えると県境は越えないじゃないかと個人的には推測している*9。
加越能バス 南砺~金沢線
最後に取り上げるのは加越能バスの南砺~金沢線、富山・石川県境を越えるバスは4路線のうち3路線が加越能バスだ。南砺~金沢線は北陸新幹線金沢開業のタイミングで試験運行が開始された路線で、実質的に翌年に廃止された砺波-金沢線*10の代替となった路線ともいえる。廃止された砺波-金沢線は国道304号で県境を越えていたのに対し南砺~金沢線は県道27号で抜けるという違いがあり、またバス停数も南砺~金沢線はかなり絞っていて城端駅前経由のバスでも14しかなく、「急行バス」と表現した方が適切な路線のように思う。
県境越えとなる区間はぬく森の郷と二俣の間で、ここでも「県境行ったり来たり」があるため都合3度の県境越えで石川県へと入る。県道27号は最近になって整備が完了した道ということもあり、走りやすい道が続くためか相当な速度を出した車が通過したり、無茶な追い越しを仕掛ける車があったりする物騒な道路というイメージがある*12。以前「金沢→長岡」で利用したときも*13バスは何回か抜かれていた記憶があるので、自分の速度で移動したい車から見ればバスの存在は厄介者なのかもしれないけど、飛ばす人向けの道路であることは間違いない。
加越能バス 二俣バス停
南砺~金沢線は、富山県側は井波、石川県側は金沢駅前とバスの結節点を起終点とするバスなので、乗り継ぎルートの選択肢はけっこうあるように思う。富山側で言えば、「金沢→長岡」のときのように利賀村を経由して八尾~富山と抜けても面白いし*14、順当に井波から高岡に出る方法もある。また、城端駅前から昨日触れた世界遺産バスへ乗り継ぐのも楽しそうだ。今後も何かの機会に利用する可能性は高いと思っている。
余談だが、バス停の撮影に赴いた際に日帰り入浴施設「ぬく森の郷」で入浴した。ここはサイトタイトルに「日帰り露天温泉」と入れるくらいに露天風呂が自慢の温泉らしい。確かにここの露天風呂は非常に広く、外にも洗い場があったり、脱衣場からも直接露天風呂へ出られるようになっていて、自分みたいな露天風呂好きユーザーにはありがたい施設だった。
*1:このブログを始める前に、加越能バス~北鉄バスの乗り継ぎで利用したことがある。
*2:現時点での運行日は基本的に土~月曜までの運行となっている。
*3:高岡~津幡~七尾の鉄道利用が¥1,720に対し、高岡駅前~脇~七尾駅前のバス利用は¥1,300になる。ちなみにわくライナー利用が最早&最安で90分と¥1,200で移動できる。
*4:長いので、以下「アウトレット」と表記する。
*5:「標高差2,721m 75」参照
*6:バス停のデザインは北陸鉄道のものなので、加越能バスが間借りしているものと思われる(そもそも降車専用バス停なので、わざわざバス停を用意したくないだろうし)。
*8:確認できた中間バス停は終点の石動駅前直前となる後谷のみ。
*9:天田峠の石川県側には狭隘区間があり、さすがにここは走らないだろうと思っている。
*10:福光~金沢間をJRバス名金線とほぼ同じルートで結んでいた。現在ではJRバスも廃止済。名金線については「もりさけてん」の「名金急行線の系譜」にて詳しくまとめられているので一読を勧める。
*12:実際、二俣バス停を撮影するために当地に向かった際、バス停付近の交差点で右折しようとしたこちらの車を追い越そうとした車がいた。