以前書いた以下の記事では最低所バス停を「大潟富士」としたが、実はそれよりも標高の低いバス停があった。「道の駅笠岡ベイファーム」バス停だ。
「標高差2,720m」を終えて時間があったので、地理院地図で標高の低い場所を改めて眺めてみた。前回はwikipediaの海抜ゼロメートル地帯と知識としてもっていた大潟村の標高の低さ、これらを組み合わせて、それらの付近に走っているバス停の標高を調べるというスタンスだったが*1、もうちょっと網羅的に調べたいと思い、地理院地図を再度展開した。
地理院地図ではいくつかのレイヤーを重ねて表現ができる。以前は色などはいじらずにデフォルトのまま眺めただけだったので、今回は一工夫してみる。サイト左上の「地図」のアイコンをクリックし、「標高・土地の凸凹」~「自分で作る色別標高図」スタイルを以下のような極端な指定にした。
地理院地図の色設定
大潟富士バス停の標高がだいたい-3.7mなので、確認したいのはそれより標高の低い場所。ただ、それだけで絞ってしまうと探しにくそうだから海面下の土地にも色を設定した*2。この設定で本州を表示させると、以下のような感じになる。
まあ、基本的に赤い地図になる。よく見ると名古屋や佐賀、新潟、そして大潟村に水色の部分が見える。試しに名古屋付近を拡大してみる。
木曽三川が伊勢湾にそそぐ直前の濃尾平野に、海抜ゼロメートル以下の地域が広がっている。南北に走る赤い線は河川で、いわゆる天井川の様相を呈している。
さらに拡大していくと、標高マイナス3メートル以下の濃い青のエリアが見えてくる。場所は愛西市や弥富市のあたりだが、海抜が低いのはどこも田んぼエリアだし*3、その標高もマイナス3メートル前半ばかりで大潟富士には及ばない。
こんな感じの調査で全国を巡ってみた。標高が海面下の場所は、基本的に海岸沿いに造成された埋立地か湖沼ばかり。濃い青の部分、すなわち標高マイナス3メートル以下で絞り込むと、秋田県大潟村、東京都江東区北砂、先ほど挙げた愛知県の愛西市と弥富市、それに瀬戸内海に面した岡山県の瀬戸内市と笠岡市付近だけだった*4。うち、付近に人家があるのは東京と愛知くらいでそれ以外の海面下は埋立地ばかり。埋立地にバスが走っていて、さらにバス停があるなんて場所はいくらなんでも大潟村くらいしかないよな、なんて思いながら地図の拡大縮小を繰り返していくうち、笠岡市の埋立地に道の駅(笠岡ベイファーム)があることに気づく。
あれ、笠岡の道の駅へ行くバスって確かあったような……と思って確認すると、季節限定かつ休日の運行*6ではあるが、井笠バスカンパニーの美の浜線が「道の駅笠岡ベイファーム」まで運行している。Google ストリートビューで確認すると、屋根つきの立派なバス停まであった。
それでは、バス停位置の経緯度(133.499915, 34.472886)を地理院地図で指定してみると……、標高は「-4.7m」と出た。これは大潟富士より約1メートル低いことになる。季節・曜日限定のバス停ではあるが*8、日本最低所バス停は大潟富士ではなく道の駅笠岡ベイファームということになろう。
なお、この道の駅笠岡ベイファームバス停の開設は2017年8月5日*9、大潟富士バス停の推測開設時期*10である2020年3月よりも前だ。できたときから最低所バス停として存在したのに、それに気づかなかったというのはバス好きとして恥ずかしい話だ。
結局、標高差の旅をやり終えた後に気づくという、ちょっとかっこ悪い話となってしまった。まあ、指摘されずに自分で気づいただけましなのかもしれない。ということで、「最低所→最高所バス停の移動」はやり直すことになりそうだ。ただ、その前にブログ内の「日本最低所バス停は大潟富士」みたいな記述を直さないとだけど*11。
*2:合わせて、地図を「標準地図」から「淡色地図」に変更している。
*4:ピンポイントで標高の低い土地は、八戸鉱山や大坪石材の武雄工場など、露天掘りをしている場所に存在するが、さすがにバスの停留所は存在しないので考慮の外に置く。
*5:地図を見やすくするため、色別標高図の透過率を50%にしてある。
*6:3月から10月の土日祝日と8/13~16。
*7:後日気づいたが、道路標識の支柱にこの場所の標高(マイナス4.6メートル)が書かれている。
*8:そもそも最高所バス停のある路線が夏季~秋季運行なので、そういった限定条件はいらないようにも思う。
*9:公式サイト内の駅長日記「道の駅発着、無料循環バス運行 | 道の駅笠岡ベイファーム」より。当初は笠岡市の無料循環バスが経由していた模様。
*10:以前の記事「大潟富士バス停を見に行く」内で触れている。
*11:別の地である可能性を考慮に入れつつ記事を書いた記憶があるので、そんなにはないとは思うけど。