- 2021.4.23: 見に行った記事へのリンクを追加
- 2023.8.18: 最低所バス停が別の場所にあったことを追記
デイリーポータルZ(以降、dpzとする)の以下の記事が話題になっていた。
思いつきと勢いで出かけた大学生の旅行みたいな話を記事にした、dpzらしい、想定の甘さまで記事に取り込んだ味のある内容だと個人的には思うんだけど、ちょっとでも調べれば分かる浅さが引っかかったのか、ブコメでの評判はよろしくなかった。
なお、自分も引っかかりを感じてツッコミを入れているので、人のことをとやかく言えた筋合いではない。
日本一低い駅から日本一高い駅まで何歩で行けるか :: デイリーポータルZ
- [dpz]
- [谷頭和希]
- [バス]
"近くに「島々集落」というのが昔あったらしい" 今もあるから……。/最低所にあるバス停ってどこなのか気になった。弥冨とか飛島村あたりだろうか。 (追記)調べてみた→ <a href="https://sonzinc.hatenablog.jp/entry/2020/10/07/000000" target="_blank" rel="noopener nofollow">https://sonzinc.hatenablog.jp/entry/2020/10/07/000000
2020/10/02 12:40
今もそこそこの規模で存在する集落*1を過去形で書くのはどうよ、と思ったので指摘したのだが、ここでの本題はそこではなく後段の部分。dpzの記事のタイトルに「駅」とあるので、ブコメが鉄道駅の最高所・最低所の話題ばかりになってしまっているが、そこではあまり気にされなかったバス停の最高所・最低所について考えてみたい。
まず、最も標高のあるバス停は、前述のdpzの記事のとおりだろう。また、googleで「バス停 最高所」と検索しても以下の記事が見つかる。
乗りものニュースの記事によると、「乗鞍山頂(畳平)」は「日本一高いバスのりば」、降車専用の「標高2716m」は「日本一高いところにあるバス停」
とのこと、設置した事業者にも取材しているようなので、最高所バス停はここで良さそうだ。
では、最も標高の低いところにあるバス停は? となる。「バス停 標高 最低」で検索しても書かれたサイトは見つからない。普段はものしりなwikipediaさんも、この件に関してはだんまりだ*3。つまり、自分で調べるしかないということになる。
ただ、厳密なものは調べようがない気もする。バス停一つ一つに標高が書かれているわけでもなく、もしそんな記録があったとしてもそれを気にする人なんてほぼ皆無だ。海底トンネル内にポツンとあるバス停、なんてのはさすがにないにしても、地下フロアがバスターミナルなんてのはありそうだし、そんな場所にバス停があった場合、そこの海抜を調べる術を自分は持っていない。なので、ネットで調べられる範囲内、いわゆるコタツ記事レベルでどこのバス停が最低標高なのかを見つけていきたいと思う。
とりあえず取っ掛かりとしてwikipediaの「海抜ゼロメートル地帯」をみてみる。ブコメでも書いた濃尾平野が面積最大となっていて、有力候補のようだ*4。一方、後述するもう一つの候補として考えていた場所が、ここには記載されていなかったりもする*5。
手始めに濃尾平野を調べてみる。標高を調べるのには、国土地理院の地理院地図を使用した。地図の中央にある十字カーソルの標高が下部に出るので、地図を動かしながら以前乗ったバスのルート*6を調べてみる。左上にある地図アイコンから、地図の種類〜標高・土地の凹凸〜色別標高図を選んで標準の地形図にかぶせるとより分かりやすくなるが、ちまちま地図を動かしての作業はあまり効率的ではない。ツールの断面図からKMLファイルが読み込めるので、Googleマイマップのバス走行ルートの情報を読み込ませたところ、最低でもマイナス2メートル台だった。これではちょっと物足りない気がする。
「海抜ゼロメートル地帯」で上がっている他の平野も、同様の方法で眺めてみる。確認したのは面積の広い越後平野と佐賀平野、低そうな個所を断面図でざっくり確認したが、どちらも濃尾平野より標高はあるようだ。海抜が低いことで知られている東京の下町も見てみた。低そうな場所をピンポイントで探していくと、亀戸から東陽町行のバス*7が通過する北砂7丁目バス停*8あたりが最低のようで、標高はマイナス3.1メートルと表示された*9。ここが最低でも良さそうだか、前述したもう一つの心当たりのある場所も確認しておきたい。
これまでとはアプローチ方法を変え、標高の低い場所から付近のバス停を探してみることにして、もう一つの候補地である秋田県の大潟村を調べてみる。標高の低い自治体として知ってはいたが、大潟村は八郎潟を干拓してできた自治体であり、住居のあるエリアと耕作地ははっきりと分かれている。このため、おそらく居住区はそこそこ標高があって、標高の低い場所といってもどうせ田んぼ、バス停などないだろうという先入観からあまり期待はしてなかった。その予測はある程度当たっており、地理院地図で確認すると水田地帯に標高マイナス5メートル台なんて場所はあるが、人の住む場所はマイナス1メートルくらいであった。
残念に思いつつもさらに地図を眺めていると、田んぼの中に大潟富士という人工の山*10があることに気づく。場所はこの地域のコミュニティバスである南秋地域広域マイタウンバス*11が走るルート沿い、時刻表[pdf]を見ると「大潟富士」というバス停が存在するようだ。大潟富士付近の標高はマイナス4メートル、北砂7丁目よりもさらに低い。ただ、バス停の場所によってはもうちょっと標高がありそうで、より正確な位置を確認したいところだが、あいにくストリートビューにバス停は写っていない。こうなると実地で確認するしかない、コタツ記事の限界だ。
ということで、ざっくりした調査からは、最高所は長野・岐阜県境付近の「標高2716m」バス停、地上最低所については秋田県大潟村の「大潟富士」バス停、また後者の標高はおよそマイナス4メートル、という結果になった。まあ、もし間違っていたとしても、(ちょっと無責任ではあるけど)ネットに放流しておけば誰かが正してくれるだろう、興味がある人の目に止まればという前提つきだが。
《2023.8.18追記 start》
再度調べたところ、地上最低所バス停は別の場所にあった。詳細については以下の記事を参照してほしい。
《2023.8.18追記 end》
ただ、大潟富士バス停の位置は気になる。すぐにでも現地調査に行きたいところだが、すでに予定を入れてしまっているので、しばらくは身動きが(というか休みが)とれない。予定の帰りに見てくる、というのもないわけではないが、さてどうしたものか。
《2021.4.23追記》
行ってきた。
《2023.8.18追記》
再調査した。
*1:wikipedia:島々によると、2012年の人口は約300人。
*2:バス停ができたのは2017年、Googleによる撮影は(記事作成時点では)2014年が最新なのでストリートビューにバス停はない。が、乗りものニュースの写真の背景などからこのあたりだと思われる。
*3:wikipedia:交通に関する日本一の一覧にて「日本一標高が高いバス停留所」は書かれているが、その対となる項目は存在しない。
*4:海面下の面積が広大なら、より深いところもあるだろうという想定に基づく。
*5:wikipedia:海抜ゼロメートル地帯の定義では海岸付近で地表標高が満潮時の平均海水面よりも低い土地のこと
とあり、その場所は対象外のようだが(そもそも、その候補地も海岸付近なんだけど)、海外については単に標高が海面下の一覧になっている。
*6:「2018.10.18-21 南から北へ116」で利用した弥富市きんちゃんバス。
*7:都営バスの亀21。
*8:他に、江東高齢者医療センターを経由して亀戸駅へ戻る亀23も通るバス停だ。
*9:なお、水準点ベースでの東京23区最低地点の調査は、「東京23区グレイトトラバース?〜23区最低地点から最高峰山頂を経て最高地点へひと筆書き」という先例があり、こちらでは北砂4丁目付近としている。
*10:造られた経緯などはwikipedia:大潟富士を参照のこと。