2020.10.25-31 南から北へ218

ターミナルというだけあって、到着するバスの案内放送が肉声で入る。もちろん番線も案内されるので*1、地方にある私鉄のターミナル駅にいるような感覚になる。

2020.10.29[Thu]
下北駅(発)~むつバスターミナル11:30→大間崎13:01~佐井車庫前(行)
下北交通 佐井線、¥1,900、48.2km

むつバスターミナルにて
下北交通 佐井車庫行

このバスに乗れば、着いた先は本州最北端バス停だ。下北駅からのバスに乗客はなかったが、むつバスターミナルでは9人が乗り込む。大畑駅までは以前鉄道があった区間だからか、利用者はけっこう多いが、トップドア車のため座席には余裕がある。前の方はお年寄りに譲って後方に席を取る。


出戸付近にあった旧大畑線の橋梁

乗客はむつ市中心部からの利用者ばかりで、基本的には減る一方。陸奥湾から津軽海峡側に出るでるために丘を越えると、前方に海がちらちら見えてくる。出戸の先で海側の道にそれて、旧大畑線の廃橋をくぐる。上野まででむつ市街からの乗客はすべて降りてしまうが、正津川以降若干の乗客があったので、乗客が自分だけにはなっていない。ただ、途中からの乗客は短距離利用ばかりで、大畑駅には乗客2人となって到着する。

旧大畑駅舎
下北交通 大畑出張所

大畑駅に着くやいなや、運転士と他の乗客は降りて待合室の方へ行ってしまった。どうやらバスはいったんここで休憩らしい*2。写真を撮ったり、廃線のホームを眺めたりして待ち時間を過ごす。

大畑駅前にて
大畑駅前で休憩中のバス

大畑駅を出て街を抜けると、これまでは海岸沿いにいくらはあった平地がなくなり、険しい道を進むようになる。山あいの落葉樹はまだあまり色づいてなく、緯度が高くても海に近いと紅葉は遅いことに気づく。下北自然の家でいったん乗客が途切れるが、風間浦村に入ったですぐに乗客があり、以降は切れることがなかった。風間浦村では下風呂温泉易国間*3あたりでは海沿いの新道ではなく集落側を走行するが、乗降はなし。だんだん大間が近づいてきて、津軽海峡の向こうに見える北海道もよりくっきりしてきた。大間町へ入るといったん海から離れて大間病院前に寄り道、海から離れて進むのかな、なんて思っていると、すぐに海沿いに復帰する。いくつかバス停を過ぎるといよいよ大間崎のアナウンスが入る、降車ボタン押す指にもつい力が入ってしまう。

下北半島国定公園 大間崎
大間崎看板と灯台

大間崎到着。やっと本州最北端に到着する。外は風がとても強い。建物の中に入りたくなるが、レストハウス感染症拡散防止のために閉鎖中。しばらくは北海道を眺めたり写真を撮ったり過ごしたが、あまりにも寒いので食堂に入る。

波から飛び出した本マグロと波から飛び出した両腕が対になっている
「まぐろ一本釣の町 おおま」のモニュメント

大間に来たからにはマグロだ。昼食では普段使わないくらいの金額だったが、奮発してマグロの乗った丼物を食べる。食べたときは思ったより普通だな、なんて失礼な感想をもったが、後日別の場所でマグロを食べたら大間のマグロがずいぶん美味しかったことに気づいた。コロナ禍の平日、しかも本州のはずれにある大間だが、観光客はけっこう来ていて、駐車場にも観光バスが数台停まっていた。ただ、何にせよ岬の風が強すぎて、人は5分とその場にいられないような状態。自分もお土産を買うふりをして土産物屋に避難した*4

バス停の奥で強風に縮こまる観光客
大間崎バス停と観光客


*1:実際に「まもなく佐井行、4番線に到着」みたいな案内があった。

*2:下北交通の時刻表[pdf]でも大畑駅には着発時間が別個に書かれており、これによると5分間停車することになっている。ちなみにむつバスターミナルも同様だった。

*3:車内放送では「いこくま」と読んでいた。

*4:そして、店内でまぐろの塩辛を見つけて、買ったりもした。

2020.10.25-31 南から北へ217

こじんまりとしたバスターミナルの向こうに駅が見える
野辺地駅

10月のダイヤ改正までは、次に乗るバスの出発は9時ちょうどだった。8時49分到着予定のバスから乗り継ぐには待ち時間が厳しいかもなんて思っていたが、改正による減便で野辺地駅前発の時刻が9時30分になっていた。減便ダイヤは恐ろしいが、まれに都合よくなることもあるようだ。

2020.10.29[Thu]
野辺地駅前09:30→むつバスターミナル10:59
下北交通 野辺地線、¥1,650、56.3km

野辺地駅前にて
下北交通 むつバスターミナル行

ここからは下北交通のバスとなる。十和田観光電鉄と同様に、こちらも前乗り前降り。野辺地は中心街が野辺地駅から離れた場所にあるため、野辺地駅から下町といった短距離利用も見られたが、基本的には長距離利用者の多い路線のようだ。野辺地の市街地を抜けるまでに乗客は4人となり、海水浴場前あたりからは海に沿って走るようになる。


干草橋付近の海*1

この道は「むつはまなすライン」と名付けられているようで、確かに海の眺めは良いが、道の上下のうねりが多く、車酔いする人にとっては拷問のような道路を北上する。風があるせいか、陸奥湾でも波が白くなっている。このため、明前付近からは風力発電のプロペラが多くみられるようになるが、風がある割に回っているものは少なかった。

海側を鉄道に譲ったり、また譲られたりするうちに人家が増えてくると横浜、ここでいったん自分以外の乗客がいなくなる。ただし乗客が1人だけだったのは1区間だけで、次の横浜新町で再び乗客があり、その後は終点まで常に他のだれかが乗車している状態だった。そういえば(臨)農協前というバス停もあった。横浜新町発車後、次のバス停のアナウンスなしでそこに停車し乗客を拾ったが、あとで確認すると下北交通の時刻表[pdf]にもストリートビューでもバス停が見当たらず、NAVITIMEではバス停記号のみが書かれていた場所にあった。道路改修などで見かける「(仮)」*2ではなく「(臨)」がつくバス停なんて初めてだ。


一里小屋付近にあった廃バス置き場

サンシャイン前の手前では、陸奥湾越しにむつ市街や恐山が眺められるが、以降は海から離れて進む。一里小屋付近には下北交通の廃車置き場みたいなところがあり、ナンバーのないバス群が見えてちょっとしんみりする。市街地に入るとほとんどの乗客は本町で降車し、終点のむつバスターミナルまで乗車したのはわずか2人だった。

むつバスターミナル 外観
むつバスターミナル

30分ほど時間があったので、ターミナル向かいのスーパーに寄る。持参した3枚のマスクのひもが連続して取れて、在庫がなくなってしまったので補充目的だ。ついでに生鮮食品コーナーも覗くと、捌いていない魚の取扱量が自宅最寄りのスーパーよりも明らかに多い。海と共に生きてる街なんだろうなあと勝手に想像する。

むつバスターミナル内部
むつバスターミナル バス運賃表

ターミナル内には20人ほどが待っていた。本当なら待合室に掲示された路線図や時刻表やらを写真に収めたかったのだが、どうしても人が入ってしまいそうだったのであきらめる。バスの側面にある、本来なら経路案内が表示される部分に貼りつけられた路線図を代わりに撮ってお茶を濁した。

むつバスターミナルにて
遠目では「ドットの細かい液晶を特注で使っているのかな」と思ってしまった下北交通の運行路線図


*1:下北交通の時刻表[pdf]には「草橋」と書かれているが、地名から考えて間違いと思われる。ちなみにこの地区を流れている河川の名前は「草橋川」というらしい。もしやそこにかかる橋は「干草橋川橋」なんじゃないかと期待したが、「干草橋」だった。ただ、地名や河川名よりも橋の名前が先にあるというのは、あまり聞かないパターンだと思う。

*2:「南から北へ」では、岳温泉のバス停がそうだった(「南から北へ186」)。

2020.10.25-31 南から北へ216

岩手県青森県ではバス停に「中央」がつくところを多く見かける。今いるバス停も十和田市中央で、中央と名乗るにふさわしいくらいにバス停は混んでいた。次のバスの混雑が気になってくるが、高校へ直行するバスが到着すると、待ち人のほとんどがそちらに乗車してしまった。肩透かしだ。

2020.10.29[Thu]
三本木営業所(発)~十和田市中央07:44→野辺地駅前08:49~馬門温泉(行)
十和田観光電鉄 野辺地線、¥1,290、34.4km

十和田市中央にて
十和田観光電鉄 馬門温泉行

待っている人は減ったが、それでもこちらのバスに9人が乗り込み、十和田市中央を13人乗車で出発する。車内に貼られたステッカーを見ると「国際興業バス」とあり、そういえば十鉄バス国際興業グループだったと思い出す*1

元町東までは直前に乗ったバスと重複する区間元町東という中途半端なバス停が終点となっているバスがあるのは、以前付近に十和田観光電鉄十和田市駅があったから故らしい。元町東では稲生川両岸にある道路を利用して転回するため、対抗してある2つの元町東バス停の両方を経由し、1度目は4人、2度目では1人の乗車があった*2。付近は大きな駐車場を持つホーマックケーズデンキ、ユニバースがあるのだから、せめてその一角をターミナルにすればよいのに、なんて思ったが、鉄道路線廃止時にすべてを手放しているのだから、十鉄にそこまでする気持ちはないのだろう。

十和田の市街地を出ると、相変わらず、というか1日ぶりに国道4号に乗って北上するスタイルになる*3。野辺地の前に七戸を経由するが、七戸案内所で2人の乗車があったのに対し、七高前で14人、七戸十和田駅で2人などとこの地では降車の方が多く、七戸町役場前を出るころには乗客6人となった。基本的には十和田と七戸間の利用が多い路線のようだが、野辺地駅到着直前には8人まで戻したので、七戸~野辺地間の需要もそこそこあるように思える。

ほとんどの乗客が野辺地駅で降車し、そして散っていく。次のバスまでの待ち時間は40分ほど、風が強くて寒さを感じるが、本州最北端に近づいてきた実感が湧いてきた。


*1:wikipedia:国際東北によると、現在は国際東北グループの関連会社となっていて、国際興業と直接の関係はないようだ。なお、国際東北グループには、十鉄バスのほかに、秋北バス岩手県交通が関連会社として挙げられている。

*2:なお、十和田観光電鉄の時刻表[pdf]にもそれぞれの時刻が記載されていることから、どちらのバス停でも乗降可能なようだ。

*3:直近の国道4号走行は「南から北へ212」であった。