2018.04.29-05.03 南から北へ43

2018.04.30[Mon]
徳山駅前17:15→岩国駅前18:59
防長交通、¥1,100、59.2km

徳山駅前にて
防長交通 岩国駅前行(右)

本日最後のバスは岩国駅行、当該路線の最終便でもある。出発は17時15分と、まだ夕方になりたてといった風情であり、最終バスの雰囲気は微塵にも感じられない。乗客は5人、徳山市街を走行する間もそれくらいの人数で推移したが、サンリブ下松西で6人が乗車し、車内が賑やかになる。サンリブは九州・中国地方に店舗があるスーパーマーケットらしい。そういえば午前中に寄ったサンパークあじすサンリブが入っていた記憶がある。ゆめタウンやイオン並みに集客力のあるお店のようだ。

バスは山陽新幹線に沿って谷あいを登っていく。途中、久保市のあたりでは旧道を走行したが、それ以外は国道2号をトレースしていく。清光台入口でまとまった下車があり、サンリブのレジ袋を抱えた人たちが清光台や勝間原といった新興住宅地の方へ帰っていくが、これでは国道からの分かれ道にあるスーパーミコーの立場がない。また、しばしの懸案だった、ニンニク臭が半端ない状態の鶏の唐揚げを車内に持ち込んだおばちゃんも勝間で降車し、バス車内が飯テロリストから解放される。

道は峠を上り詰め、その後は高森へと下っていく。高森では時間調整のため数分停車。見回すと乗客は自分を入れて2人となっており、残った人も阿山で下車し、秋穂以来の乗客一人ぼっちとなる。この路線における高森はちょうど中ほどに位置するが、ここで乗客がいないのなら今後はずっと一人きりかと覚悟を決めていると、野口峠*1でおばちゃんが乗車。周囲には「いろり山賊*2なるドライブインレストランくらいしかないので、そちらで働いている人が帰宅するのだろう。

その後入野では若い女性が乗車する。ハンドバック程度の荷物でそこそこ化粧も濃いめだったことから、夜の帳が下りた岩国で働く人なんだろうなあと勝手な想像をする。こんな山間部から働きに出るのは大変だし、帰りの足はどうするのだろうと心配にもなるが、そこそこお金になる商売でもあるし、帰りはタクシーなんだろう、と勝手に妄想する。いや、そもそも「これから岩国へ働きに出る」自体からして妄想なのだが。

保木を過ぎると錦川を越え、いよいよ岩国が迫っていることを知る。バスは新岩国駅錦帯橋と経由して、あとは岩国駅に向かうばかりだ。すでにいわくにバスの営業エリアに入っていることもあり、バス停に待ち人がいても見慣れない防長交通のバスに乗り込もうとする人はいない。また、アナウンスを聞く限り、いわくにバスのバス停をいくつか通過しているようだ。そんなこんなで暗闇迫る岩国の街をバスは順調に進んで、中央通りで(妄想の中では)これからお仕事に向かう予定のお姉さんを降ろし、最終的には乗客1人になって岩国駅へと到着。バス停がなぜか駅から離れたロータリーの一角にあって、目と鼻の先にもかかわらずそこにたどり着くまでに3回も信号待ちをさせられた上で到着。駅前は整備中なので、それが完了した暁にはもっと良い場所にバス停が移動していることを願う。

岩国駅と防長交通のバス停
翌朝の岩国駅前(手前が防長交通のバス停)

ホテルは中央通りバス停の近くなので、歩いて戻ってチェックイン。1本前のバスでは牡蠣&ビールなんて言っていたのに、いつの間にか頭の中が中華モードになっていたので、近くの中華料理へ。入るとそこそこ値段のするちゃんとした中華だったので、ちょっと慌てる。幸い財布には余裕があったので、同じく慌てて最安メニューでまとめている他の人を尻目に、ちょっとだけ豪華な夕食をいただく……といっても3,000円程度だけど。中華とビールでちょっと幸せになりすぎたのか、宿に戻るといつのまにか寝てしまっていた。待ち時間も含めたら12時間近くバスのお世話になっていたわけで、体は相当疲れていたようだ。


*1:「のぐちだお」と読むらしい。

*2:お店のサイトによると、日本の伝統文化、日本人の心を肌で感じて頂けるお店 とのことらしい。お店の名前は山賊なのにえらく崇高なことを言っている。ちなみに通過した時間帯のせいかもしれないが、お店は家族連れなどでけっこう混んでいた。

2018.04.29-05.03 南から北へ42

2018.04.30[Mon]
防府駅前14:40→徳山駅前15:37
防長交通、¥630、27.1km

防府駅前にて
防長交通 徳山駅前行

次のバスで周南市へと向かう。防府と周南を結ぶバスということで、これまで乗ってきたような車両を漠然と想像していたが、やってきたのは市内循環バスで使われるような小振りのバスだった。防府駅からの乗客は6人、夫婦1組を除いたすべてが男性で、老人という風情の人もいない。田舎のバスでは珍しい客層で、皆さん免停にでもなったのかと他人事ながら心配になる。加えて、末田で降りた男性はイオンで買い込んだレジ袋3つ分になるカップ麺を抱えていた。免停だけでなく健康面も心配だ、余計なお世話だけど。

富海*1付近で国道2号に合流し、バスはさらに東を目指す。海を眺めると、潮干狩りをやっていた。ふと、おいしい貝が食べたくなって頭の中が牡蠣一色になるが、あいにくシーズンは終わってしまっている。では今晩何を食べようかと思案するも、潮干狩りで採れる貝ではないのに、牡蠣とビール以外思いつかない頭になってしまう。ダメな大人だ。

周南市へ入り、福川中前あたりで国道2号から外れ、だけど昔は国道2号だったであろう道で徳山駅へと進む。下関を出発してから、黄色一色に塗られた電車と何度かすれ違う。最初のころは「和がらし色の変な電車」と思っていたが、見慣れてくると周りの景色に溶け込む塗装のように思えてきた。単色なのは経済的な理由が大きいものと思われるが、この色は割と風景に溶け込みやすいいい色なんじゃないか、なんて思う。

小さいバスの割には途中の乗降はそこそこあり、結局徳山駅まで自分以外の誰かが必ず乗っている状態のままだった。バス会社にもいろいろ事情があるのだろうが、乗降が多い路線だったので、ドアが一つしかないこのようなバスにはあまり向かないような気がする。そのせいか、徳山駅には数分遅れて到着した。

ここでも1時間半ほど待ち時間があるので、「CCC図書館」を見物しておく。徳山駅は最近、図書館風の本屋ができて話題となったが、見てみると案の定、賑わっているのはスターバックスばかりだった。ただ、読書用のスペースなのか屋外にもイスとテーブルが配置されている*2のでその一角を陣取り、これまでの行程のメモを整理することができた。図書館が図書館として機能していないのはやるせない思いだが、目的不明なイスとテーブルが自分にとってのメリットになっている。はたしてそれは良いことなのか考えてみるが、もちろん結論など出ない。

「CCC図書館」より
徳山駅在来口ロータリー


*1:「とのみ」と読むらしい。良い地名だ。

*2:ただし、図書館の出入口にはレンタルビデオ店で見かけるようなタグチェック用ゲートがあった。これだと貸出手続きをしていない本は屋外に持ち出せないと思うので、図書館の閲覧スペースにはならないだろう。現実、屋外の利用者は数人が一緒に勉強するかたち(そして、ほとんど勉強にならない)の中高生ばかりだった。

2018.04.29-05.03 南から北へ41

2018.04.30[Mon]
秋穂漁港入口12:40→防府駅前13:19
防長交通、¥860、19.8km

秋穂漁港入口にて
防長交通 防府駅前行

1時間ほど待つと、防府駅行のバスがやってくる。秋保漁港入口からの乗客は自分のみ。今回の行程では初めての一人きりだ。車内のアナウンスに耳を傾けると、「この車は防府駅行です」と「車」という表現をしていることが気になった。確か宇部市交通局もそうだったように思う。地元で乗るバスが「このバスは~」と表現しているせいの違和感だと思うが、こんな些細な点でもバス会社によって異なるというのが面白い。

大海小前からは狭小区間を進む。一部橋梁の架け替え工事のため、新道側へ迂回する区間もあったが、狭い道を進む大きなバスというのは何度乗っても楽しい。進行方向右側に見える海と板塀の住宅、細い道の上にだけ見える青い空、絵になる光景だ。ここに山口県オリジナルのオレンジ色したガードレールが並べばさらに良いのだが、あいにく今日はほとんど見かけない。最近はオレンジ色をやめたのだろうか。ちょっと気になる。


バスが進む海沿いの旧道

大道駅を越えても乗客はなく、このまま一人きりかなと考え始めた矢先、防府西高入口で女子高生が2人乗車する。彼女たちの話題はもっぱらTOKIO山口メンバーの話。片方の女子高生が「メンバー」に対して辛辣で、もう一人の方はあまり興味がなさそうに相槌を打っている、そんな対比がちょっと面白かった。

防府駅は北口に到着。南口にはイオンがあり賑やかだが、北口は静かでのんびりするには気持ちのよい空間だ。駅の隅には防府出身である種田山頭火銅像があるが、あまり立派ではない人生を過ごした彼からしたら、銅像なんてこそばゆいんじゃないかと思う*1

そういえば食事がまだだったので喧騒の中にある南口へ行き、イオンで昼食を摂る。フードコートに隣接して子供の遊び場があって、子供たちがゴムボールをぶつけあってはしゃいでいる。飲食する場所の近くに埃が舞う場所を設けるというのもなかなかカオスだ。さっさと食事を済ませて、元いた北口で怠惰な時間を過ごすことにする。

防府駅北口で待機するバス
昼下がりの防府駅北口


*1:もちろん、人生は立派でなくても、山頭火は素晴らしい句を多く残している。個人的にはむしろ好きなタイプの生き方ではある。