県境を越えて走るバスが少なくなっていると言われてきて久しい。ただ富山県の場合、接しているすべての県と路線バスが行き来していることに気がついた。こんなことは他の都府県境だとあまりなさそうだと思ったので調べた結果を記録しておきたい。「バスに乗るのが目的」と謳っておきながらバスに乗らない記事なので、いわゆる「コタツ記事」ということにはなるが*1、どれも今後時間と機会があれば乗ってみたいと思う路線ばかりなので、乗車した際はこのシリーズで新たに記事を作成したいと思っている。
なお、ここで言う「県境を越える路線バス」には、高速道路*2を介して県境を越えるものを含めていない。また、運行状況は2024年9月現在の情報となる。ちなみに富山県境を越える路線バスは計4社3自治体が運行する10路線が存在する。
ということで、まずは富山-新潟県境を走行する路線バスについて。こちらは隣接する2つの自治体のコミュニティバスが県境を越えて走行している。
あさひまちバス 市振線
- 運行主体:朝日町
- 路線名:あさひまちバス [A2]市振線
- 県境越え区間:境東[富山]~玉ノ木[新潟]、大平[富山]~玉ノ木[新潟]、市振[新潟]~境東[富山]
- 運行日:平日(祝日および12/31~1/3は運休、大平経由便の場合、月・木以外はデマンド運行)
まずは富山県側の自治体である朝日町のバスに触れる。県境を越えて走る路線は市振線で、「市振」とは新潟県糸魚川市の地名となる。自治体の運行するバスが他の自治体まで足を延ばすこと自体あまりないパターンだが、路線名が他県の集落名になっているというのも相当珍しいように思う。ただし、これは以前聞いた話になるが*4、市振地域は糸魚川市の中心部との距離があるため、消防・救急などは朝日町に委託しているとのことなので、自治体のバスが越境するのは必然かもしれない。
この路線が県境を越える区間は境東・大平*6と玉ノ木、および市振と境東の間となる。こんなややこしい書き方になったのは、市振線の市振地区内のルートが「ラケット型」と呼ばれる環状運転をしているため。泊駅方面からやってきたバスは境東~玉ノ木で県境を越えたのち、市振の集落に入って市振バス停を経由して、折り返しの玉ノ木は通過して*7境東へと向かっている。単純な往復であればこうはならないが、末端部のバスルートが特殊であるため、行きと帰りで県境を越える区間が異なることになっている。じゃあ大平は? ということになるが、大平バス停は火・水・金曜については「リクエスト運行」*8になっているが、月・木曜は必ず経由するバス停となっている。時刻表を見ると大平は境東と玉ノ木の間に書かれているので、曜日もしくは予約状況によっては境東~大平~玉ノ木といったルートで県境を越える場合もあるということになる。まあまあややこしい話だ。
あさひまちバス 玉ノ木バス停*9
玉ノ木バス停の位置関係*10
市振線は県境を越えてすぐの市振で折り返してしまうが、その先の新潟県方面にも弱々しいながらバスは走っている。糸魚川市が運行する「青海地域コミュニティバス」の「きらら青海(ほっこり館)・玉ノ木線」がそれで、「弱々しい」と表現したのは運行日が金曜日のみの3.5往復*11というところから。1日あたりの運行本数はコミュニティバスとしてはよくある数だけど、それが週1回だけというのはあまり見かけないように思う。なお、この乗り継ぎは以前やったことがあるので詳細はそちらを参照してほしい*12。ちなみに両バスを乗り継ぐ場合は玉ノ木が同じ位置での乗り継ぎとなるのでベストだが、市振バス停と青海地域コミュニティバスの桔梗屋前バス停でもさほど距離は離れていないので悪くないと思う。
あさひまちバス 市振バス停
青海地域コミュニティバスの桔梗屋前バス停から市振バス停を望む*13
なお、バス停を見に行った際、境東と大平のバス停を現地で発見することができなかった。「バスルート」で確認すると、2022年度版国土数値情報ではバス停が出てこないが、バス停情報をGTFSに切り替えるとどちらのバス停も表示される*14。ただ現地では見つけられなかったので、バス停が用意されていないだけなのかな……と思っていたところ、後日大平については古いGoogleストリートビュー漁りによりバス停位置が特定できた。確かに現地にも待合所っぽい感じの小屋があったのだけど*15、雨だったこともあって車を降りてまで確認しなかった。いつになるかは分からないけど、必ずやあとでリベンジしたいバス停だ。
2014年10月の大平バス停(小屋)
青海地域コミュニティバス 市振・上路線
続いて取り上げるのは糸魚川市が運行するコミュニティバス。これは先述した「きらら青海(ほっこり館)・玉ノ木線」の支線みたいなもので、そちらと同じく金曜日のみの運行となっており、更には全便予約運行となっている。行先の上路*16があるのは、県境となっている境川の支流となる上路川沿いにある新潟県糸魚川市の集落。通常なら起終点のバス停は同じ新潟県内なので県境をまたぐ必要などないはずだが、新潟県側の境川岸は道路が繋がっていないので、「県境を越える路線バス」に含めている。もちろん、ここでの記述はネット上の情報のみでまとめた内容であり、現地で実際にバスに乗ったわけではないので、あくまでバスの運行時間や路線図からの推測でしかない(が、たぶんそうだろう)。
越後トキめき鉄道 市振駅
この路線のバス停は市振駅前と上路だけ、起終点のみのこじんまりとした路線となっている。(あくまで予想ではあるが)ルートは市振駅前を出発後、前述の玉ノ木を通過後に県境を越えて境川沿いに進み、大平の手前で新潟県へ戻って上路に到着するものと思われる。上路は行き止まりの集落なので、上路より先へ向かうバスは存在しない。なお、現地徘徊時には市振駅前ではバス停を確認することができず、バス停を確認できたのは上路だけだった*17。
青海地域コミュニティバス 上路バス停
隣県の自治体のコミュニティバスが集落をカバーしたり、県内をつなぐ道路がないために*18となりの県内を通過するコミュニティバス、両方とも特徴ある路線だ。あさひまちバスは利用したことがあるので、未乗である市振・上路線を利用してみたいところだが、週1回かつ金曜日のみ、加えて1.5往復でデマンドバスということで、利用する難易度は非常に高い。予約制のバスを単純往復で乗車するのはさすがにダメだと思うので、利用するとしたら市振駅前~上路に乗車してその後は大平まで歩き、そこから先はあさひまちバスといった感じだろうか。この場合、市振駅前14:10→上路14:30と大平15:45~泊駅前16:20を乗り継ぐことになる。乗り継ぎ区間の徒歩距離はだいたい4kmくらいなので大丈夫だろう*19。それでも金曜日しか乗車できず、さらにはともに予約が必要*20でさらに両方とも最終バス*21であるといった難関は残ったままだ。さらに言うとこの区間、バス停を見に行った際に道路上をニホンザルが闊歩しているのを見かけた場所でもある。利用してみたい気持ちはあるが、なんだかんだ障壁の高い路線だ。
*1:さすがにそれだけではアレなので、バス停の場所確認と写真撮影のため、9/28と10/5に富山県境を自動車で彷徨ったりもした。あとで確認したら2日で500km近く移動していた。
*3:県境の境橋は現在橋梁架替中であるため、仮橋上からのストリートビューとなった。
*4:宮崎で宿泊した際に宿の主人から聞いた。「金沢→長岡14」参照。
*5:境東バス停が見当たらなかったので、1つ手前の境・護国寺バス停を撮影・掲載した。
*6:読みは「おおひら」ではなく「だいら」らしい。
*7:玉ノ木バス停は糸魚川方面の車線にバス停はあるが富山方面にはなく、また富山方面への通過予定時刻の設定もない。
*8:いわゆるデマンドバス。利用する際は事前に予約が必要なバス停。
*9:写真中央のバス停右奥の電柱が青海地域コミュニティバスの玉ノ木バス停。
*10:左側の電柱が青海地域コミュニティバス(丸板の下には時刻表あり)、右側のバス停があさひまちバス。
*11:玉ノ木行が4本、きらら青海行が3本。
*13:市振バス停は郵便局のオレンジ色の看板付近にある。
*14:他に、ゼンリンが地図情報を提供しているNAVITIMEの地図でもプロットされている。
*15:Googleストリートビューでこの小屋を拡大すると、「公共バス停留所」の文字が確認できる。なお、最新のストリートビューや現地調査時にはこの掲示がなかった。
*16:読みは「あげろ」らしい。
*17:ただ、上路もよくあるバス停ではなく、電柱+丸板という、青海地域では馴染み深いが他では見かけないスタイルだった。
*18:短距離を結ぶ道路がないだけで、上路集落から親不知・青海方面への林道と思われるルートは存在する。
*19:逆方向の乗り継ぎもできなくはないと思うけど、大平13:35~上路14:30と乗り継ぎ時間が1時間を欠くことになり、徒歩ルートが登り坂ということもあってけっこう厳しいように思う。
*20:前述のとおり、金曜日のあさひまちバスの大平利用は予約が必要。