前回の記事でも触れたように、この日は単純な移動日で「標高差2,721m」を進める予定はない。ただ、せっかく福井県内に前泊する機会を得て、さらに有休もとってしまっていたので、こんなときは乗りたいバスに乗ろうと思う。前回の「標高差2,721m」の後半で敦賀から越前海岸を北上したとき*1は残念ながら天気が悪かった。天気の良い越前海岸も眺めてみたい、という想いがまず浮かんだので越前海岸を走るバスを乗り継ぐつもりだ。……なんて取ってつけたような説明を書いてはみたけれど、実際は福浦線が近々なくなるらしいというニュースを目にしたことが一番の理由だったりする。
2024.06.13[Thu]
田原町13:28→かれい崎15:14
福井鉄道 福浦線、¥1,600、44.8km
福井鉄道 かれい崎行
ということで福浦線に乗車する。せっかく乗るのなら始発バス停から、と思って田原町にやってきたが、バスターミナル的な施設はなく、道路沿いにバス停が2つあるだけの停留所だった。10分ほど前にバス停へ向かうと、すでにバスは待機していた。もちろんすぐに乗り込む。運転席後方にドライバー異常時対応システム(EDSS)の非常ブレーキスイッチがついたバスなので、バスの車体は新しそうだ。
田原町から自分だけを乗せてバスは出発する。しばらくは路面電車の経路をたどって南下して福井駅へと寄り道し、ここで乗客が1人増える。福井駅を出たあとは再度路面電車の通りに戻って南下を続ける。福浦線廃止の理由は鉄道と並行しているから、ということなので、鉄道を恨めしく思う気持ちもあるが、運転士不足という問題への対処なので、仕方がないことではある。
信号待ちで停車した際、道路沿いに「Dining Convinience」と書かれた店舗を見かけた。店の名前は「オレンジBOX」、田原町でも見た記憶がある店名だ。後日調べたら福井市内にあるローカルコンビニ兼食堂らしい。寄ってみたいがバスからは降りられないし、2度昼食を食べたせいで腹もパンパンだ。路面電車が分かれてしばらくすると2度目の寄り道となる赤十字病院へ。ただ乗客はなく、バス停付近に停車していた軽自動車を蹴散らしただけだった。
その後足羽で乗客を1人増やし、バスは南下を続ける。つつじヶ丘の先、浅水川の橋を渡った直後に右折してようやく西進するようになる。南下しているときはかつての国道8号を、西進しているときも昔からの道を進んでいるような雰囲気で、長い歴史のある路線バスといった風情だ。これが廃止されるというのは残念ではあるが、その前に乗っておけたというのは喜ぶべきことなのかもしれない。
西田中で以前乗車した鯖浦線と合流するが、次の次のバス停である朝日ですぐに別れてしまう。福浦線は織田まで国道417号沿いに進むためだ。国道沿いと言っても、茱原*2付近は旧道と思われる集落内の狭い道を進む。福浦線が廃止となるとこのあたりを走行するバスがなくなってしまうことになりそうだが、おそらく茱原経由の鯖浦線が設定されるのだろう。一方、このバスの利用者である足羽で乗車した人*3など代替路線がなくなってしまいそうに思う。ちょっと心配だ。
織田に着くと、予想通りしばらくの時間調整。ここまでも赤十字病院やベル前、西田中で時間調整があった。何度も時間調整が入るくらいに余裕のあるダイヤ設定なのかもしれないが、想定よりも乗降が少なくてこうなっている可能性もある。ここからは朝日で別れた鯖浦線と再合流する*4。バスはきっちり2分停車してから織田を出て市街地を進み、最後の寄り道である織田病院を経由する。時刻表上では福浦線かれい崎行の中では唯一このバスが織田病院を経由するバスだが、利用者はなかった*5。その後は国道365号に出て山越え、峠をトンネルで抜けた後は急な下りとなり、国道はループ橋やトンネルなどを駆使して下っていくが、バスはルート中にバス停がないにもかかわらず旧道を丁寧にトレースして進む。これはこのルート(梅浦バイパス)が開業して間もないせいで*6、路線バスのルート変更申請が未実施だからかと思われる。急坂で一気に高度を下げるとすぐに梅浦、T字路の向こうに海が見えた。田原町を出発して約1時間半、ようやく越前海岸だ。
梅浦からは再度南下となり、あとは海を右手に眺めながら進む。海岸線に沿った狭い平地に民家や道路が譲り合って作られている、そんな中をバスはゆっくり進む。福井駅からの乗客はくりやまで一緒だった。何らかの用事があったとはいえ、1,000円越えのバス移動は大変だろうと思う。この路線を日々通学で利用している人もそこそこいるんだろうな……って考えると羨ましさしか浮かばないけど。
乗客が自分だけになってからは10分ほどで終点のかれい崎に到着する。到着時間はほぼ定刻通り。乗客を降ろしたバスはすぐに南方へ走り去っていった。
かれい崎バス停*7
*1:「標高差2,721m 59」および「標高差2,721m 60」
*2:読みは「ぐみわら」。
*3:西田中の4つ手前にある和田橋で降車した。
*4:正確に言えば、織田の2つ先の市場バス停から。織田の次のバス停は、福浦線(明神前)と鯖浦線(メルシ前)で異なっている。
*5:4本あるかれい崎行の中で日中の便はこれだけなので、そうなっているものと思われる。
*6:「道路改良工事 一般国道365号 梅浦バイパス (丹生郡越前町梅浦) | 福井県ホームページ」によると、開通は2024年3月10日とのこと。
*7:福井方面行のバス停。