2022.04.30-05.07 南から北へ253

JR北海道バス 深川バス停
深川バス停

ここからは一気に名寄まで進む。深川名寄間を3時間10分で結ぶ深名線廃止代替バスに乗車する。

2022.05.04[Wed]
深川14:25→幌加内15:38|15:48→名寄17:35
JR北海道バス 深名線、¥2,520、132km

深川にて
JR北海道バス 名寄行

深川からは旭川経由で名寄へ向かうルートもあるが、旭川での乗り継ぎが悪かったのと、長時間乗車できるバスの魅力に抗えなかったので、当初からこのルートでほぼ決めていた*1深川からの利用者は5人。地元の老夫婦とマニアが3人といったところだろうか。運転士が無線から「天候がすぐれない感じです。気をつけて行ってください」との指令を受けると、バスは静かに発車した。

深川の市街地を抜けた後、若干くねくねと右左折を繰り返すのは、深名線の旧駅を経由するためだろうか。多度志まで人家があまりないルートを進むのもそういった理由なのかもしれない。深川多度志間には停車バス停のない種別「快速」というのも運行されているが、そちらだと別の短絡ルートになりそうな気がする。また、この区間には快速ではないバスにもルート違いが存在し、今回乗ったのは五番通を通るルートで、他に丸山公園前経由というのも存在する。ただし後者は最終便1往復のみとかなりレアだ。


五番通付近でストリートビューに捕捉された深名線バス

緩やかな山越えに入ると、旧深名線跡っぽいものが見えた(気がした)。走りやすい道だったので、バスは苦も無く駆け上って、多度志側に出る。このあたりは稲作なのだろうか、どこも代掻きをやっていた。快速と合流する多度志の直前、多度志神社前*2で老夫婦が降車する。すぐの交差点*3を右折すると、いよいよ雨竜川沿いに遡上していくことになる。雨竜川の水量は多く、河原で成長した樹木の根元が洗われているような状況、雪解けの季節ということだ。

白樺と畑に挟まれたまっすぐの道
幌加内付近の車内から

多度志から先は概ね国道275号とともに進む。国道から外れるのは幌加内以外だと、沼牛小学校前の前後のみ。すでに閉校となっているのに*4「跡」も「旧」も付与されずにそのままになっているのは、それはそれで少し切ない。幌加内手前の幌加内峠下あたりから霧雨となる中、路線バスは乗降のないまま淡々と進み、そのままこのバスの行き先として表示されている幌加内へと到着した。

畑は緑、林は茶色、山と空は白と黒
幌加内の風景

バスの時刻表[pdf]や行き先表示では幌加内止まりとなっているが、接続するバスがあれば基本通しで運行されていると以前何かで読んだことがある。そのあたりの話を運転士に聞いてみるとその通りとのこと。とりあえず車内に荷物を置いたままでトイレ休憩をとる。また、運賃も深川から名寄まで通算できるとのことなので、ここでは1本のバスとして取り扱う。

幌加内にて
名寄行となったバス

バスターミナルとしての機能も担っている幌加内交流プラザにはトイレだけ寄って、外に出て一服する。と、運転士から手招きされて、灰皿のある場所に招かれた。良い機会なので話を伺うと、JR北海道バスの所属ではなく道北バスの運転士とのこと。確かに車内掲示JR北海道バス道北バスの連名になっていたので気になっていたが、もう少しで定年だという運転士曰く「下請け」とのことで、現在はそのような運行体制になっているようだ*5。他にも「今年のGWは制限がないせいか利用者は多い」とか、「1本前のバス*6だったら乗客なしだったのに」などといった直近の利用状況とか、「(鉄道が廃止されて)バスに転換となった直後は利用者も結構いたけど、もうみんな死んじゃったからねえ」なんて利用者が減る根本的な要因まで、たばこ1本分の時間だったが様々な話を聞くことができた。

幌加内にて
幌加内交流プラザと名寄行

バスに戻ると運転士による回数券の巡回販売が行われる。「200円お得です」とのこと、せっかくなので購入する。名寄行となったバスは乗客を1人増やして出発する。幌加内はこれまで通過してきた場所よりは街、ただそれほど大きくはない。それでも幌加内より先は人家がさらに減った山間部へと入っていくので、このあたりの中心地感はある。ルオント前では幌加内からの利用者が降車して、乗客は深川からの3人へと戻る。政和あたりからは手入れのされていない畑が多く確認できるようになり、天候が良くなっていくにもかかわらず風景の寂しさがより増していく。添牛内郵便局前では深川からの1人が降車。脚は蕎麦屋に向かっていたので、バスマニアではなく美味しい蕎麦目的の旅行者だったのかもしれない*7

青空と溶け切らぬ雪が残った朱鞠内
三股方向からみた朱鞠内

いよいよ現役の畑が少なくなり、廃線となったローカル線をまたぐ現役の跨線橋などでわびしさを高めながら進むと、朱鞠内に着く。想像していたよりも集落は小さく、バスも待機なしですぐに出発した。いったん朱鞠内湖のほとりにある三股まで進んでからUターンして朱鞠内の集落まで戻り、今度は湖の東岸を走るようになる。傾いてきた日差しが朱鞠内湖の向こう側に見える景色はなかなか良い。

湖に釣り客らしき人は来ているようだが、人家の類は一切確認できない地帯を進む。直前のエンジン橋前バス停から次の母子里までの運賃は430円、20分も離れた隣りのバス停だ。母子里は四方を山に囲まれた集落で、南方の朱鞠内へは前述のとおり430円の距離、この先バスが進む先も420円*8の距離と、隔絶感が半端ない魅力ある場所。ここで星空を見たらきれいなんだろうなあ、なんて想いを馳せた。


母子里バス停と体育館

母子里国道275号から逸れて、東方にある名寄へと転進する。名母トンネルを抜けると一気に視界が広がって名寄市街が見渡せるようになる。いやこれ、むちゃくちゃ楽しいぞ、と気分が一気に高揚してくる。ふもとまで降りてくると、これまでもいくつか見てきた日塔宅前北川宅前といった「住宅前バス停」がお出迎えしてくれるのも嬉しい。「南から北へ」では最長路線となった深名線、利用時の楽しさも最高だった。

名寄の盆地に出て天塩川を越えると、すぐに市街地へと入る。街中の停留所をいくつか過ぎると終点の名寄。通し乗車の2人が降車となった。運転士より最後に「楽しかった?」なんて聞かれ、つい「楽しすぎました」と返答してしまう。あっという間の3時間であった。

名寄駅前にて
名寄駅前交流プラザ「よろーな」

宿は駅から少し離れたところ。部屋は広く、トイレと風呂が別だったというだけで嬉しくなる。食事は今回の旅では初めての飲み屋*9。翌日は最北端のバス停に届く予定なので、その前祝いというわけだ(言い訳だ)。三升漬けの乗った冷奴が美味しすぎて、つい飲みすぎてしまったが。


*1:心が揺れたのは「旭川経由ならICカードが入手できる」くらいで、それもさざ波程度だった。

*2:空知中央バスの同名バス停も並立していた。

*3:ここの角にコンビニ(セイコーマート)があったけど、ここ以降では名寄に入るまでコンビニを見ることはなかった。

*4:余談だが、閉校済の学校をいくつか見て思ったことが一つ。廃校後は校舎だけが取り壊され、体育館が残されるのはなぜなんだろうか。沼牛小学校やのちに触れる母子里の廃校などもそうだった。

*5:ただし、後述したようにバス切替当初の話をこの運転士が知っていたので、もしかしたら転換当初から「下請け」が運行していたのかもしれない。

*6:深川11:35→名寄14:45のこと。

*7:ちなみに添牛内郵便局は20年以上前に廃止済で、今ある蕎麦屋が郵便局の建物らしい(添牛内郵便局 (廃止) | inukugi web |)。

*8:牧場前日塔宅前。所要時間は14分。

*9:そういえば、深川から名寄まで乗り通した「同志」をこの店で見かけた。寄った飲み屋が宿のおすすめだったので、もしかしたらバスだけでなく宿まで一緒だったのかもしれない。